マネジャー(マネージャー)に求められる役割、マネジメントスキルとは?

マネジャーは英語の「manager」の発音を日本語にしたもので、日本語表記ですとマネジャー、マネージャーとありますが、どちらも意味は同じです。

役職としてのマネジャーと、実際の職務が一致していないケースもままありますが、マネジャーの本来の意味は、企業や組織においてマネジメントを行う役割ということになります。

マネジメントという言葉は、元々は経営学者のピーター・F・ドラッカーが1973年に刊行した著書『マネジメント』で定義・広めた言葉です。日本では、映画化もされたベストセラー『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーのマネジメントを読んだら』をきっかけに有名になりました。


今回は、より実務で使いやすい形で、ミドルマネジャーはどんな役割が求められ、その実行のためにどんなマインドセットやマネジメントスキルを身につける必要があるのか、について解説します。


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マネジャーに求められる役割

そもそも、メンバーとは異なる「マネジャーの役割」とは何なのでしょうか?役割としては、主に下記のようなものがあります。


目標の設定・共有

まずは、成果をあげるためのチームの具体的な目標を設定し、それをメンバーに共有し認識してもらわなければなりません。目標が明確になることで、メンバー全員が同じゴールを向けるようになり、チームワークの発揮や協力関係の基礎となります。

チーム全体の目標を設定した後は、その目標に紐づく形で、メンバー一人ひとりの目標も設定していきます。

▶関連コラム:目標設定のやり方


プロジェクトの管理

プロジェクトや各種業務の進捗状況を把握し、管理・調整し、プロジェクトを進めていかなければなりません。また、メンバーのスキルや強み弱み、志向性や現在の仕事の状況を見極め、チームの中で最適な形で仕事を振り分ける必要があります。


人材育成・指導

企業にとって人材は重要な経営資源です。メンバー一人ひとりの成長は、チームや企業の発展に直接つながります。そのため、メンバーや部下の教育・育成も行わなければなりません。部下の状況を把握して声をかける、適切なタイミングで助言をする、場合によっては自ら率先して手本を示すなど、メンバーが成長できるように導く必要があります。

▶関連コラム:能力・スキルの向上を実感させるマネジメント


動機づけ

仕事を通じたコミュニケーションによって、メンバーを動機づけることもマネジャーの役割です。進捗や行動に対して褒めたり、認めることで、メンバーの仕事へのモチベーションを高めることが求められます。

▶関連コラム:承認と称賛の使い方


責任者

マネジャーには責任が求められます。メンバーの責任も、マネジャーが最終的な責任を持つことになります。


意思決定者

最終的な意思決定者の役割が求められます。マネジャーが意思決定できなければ、業務は停滞し、メンバーは迷い、チームのパフォーマンスは低下してしまいます。マネジメントが行う意思決定は、組織の将来を左右することもある重要なものです。


評価

マネジャーは、一定の期間であらかじめ決められた評価指標に基づき、メンバーを評価する必要があります。人事考課の意味合いと同時に、良いところ、改善すべきところをフィードバックします。また、メンバーが組織の目標や自分の目標に対する評価指標を認識していることで、マネジャーの管理ではなく、メンバーそれぞれが自己管理を行うことができるようになります。

▶関連コラム:評価のマネジメント


特に、古い時代のマネジメントしか知らない、10年以上同じマネジメントをしているという方は、業務遂行や評価に篇重しており、動機づけや育成に対する意識が弱い傾向が見られるので注意してください。マネジメントするメンバーの価値観や労働観は大きく変化しており、上記をバランスよく実行しなければ通用しなくなっています。

マネジャーが持つべきマインドセット

役割については大枠理解できたと思います。

では、役割を遂行するにあたって、マネジャーはどういったマインドセット、姿勢で臨めばよいのでしょうか。


組織で成果を出す

多くのマネジャーは、個人としての成果や能力を認められマネジャーになります。

個人として能力が高いというのはもちろんなのですが、個人でやれることには限界があります。「組織で成果を出す」という考えにシフトし、そのために自らの行動を変えていく必要があります。


メンバーや仕事に対する真摯な姿勢、リスペクト

成果を出す力だけでは、実はメンバーにとってあまり尊敬や信頼の対象になりません。例えば、どんなに仕事の能力が高かろうと、メンバーに対するリスペクトがないマネジャーへの評価は低いものです。これでは組織として見た場合に、マネジャーの役割を果たせているとは言えません。

チームをこうしたい、成長してほしいという想いであったり、メンバーに対する人としてのリスペクト。私はこうしたい、顧客や社会に貢献したい、という仕事に対する想い。こうした私心以外の考えや姿勢が、良きマネジャーには求められます。


強い責任感

プロダクトジェクトやチーム、メンバーに関する課題・問題を自分ゴトとして捉え、立ち向かう姿勢が求められます。問題から逃げたり放置してはいけません。


マネジャーに必要なマネジメントスキル|基本的な7つのスキル

マネジャーとしての役割を果たしていくためには、様々なスキルが必要になります。押さえておかなければならない基本的なスキルを紹介します。


● 現在の職務における仕事のスキル

自身の仕事に密着した専門性、スキルを高いレベルで備えていることは大前提となります。マネジャーになる方は、このスキルについてはクリアしているケースが多いです。


● テクニカル・スキル

ロジカルシンキングや、数値を使った分析力、人前で分かりやすく話す能力、基本的なPC操作のような基本的なスキルは、会社が変わっても必要なポータブルスキルであり、欠けていると大きなマイナスになります。

例えば、部下がやればいいという姿勢で、いつまでもEXCELがまともに使えない年配上司や、人前でうまく話すことができない上司は、メンバーから冷ややかな目で見られることはあっても、多くの場合尊敬されることはないでしょう。基本的なビジネススキルを疎かにしてはいけません。


● コミュニケーション・スキル

コミュニケーションが重要と言うと、メンバーとの接点を多く持つことや、メンバーからの不満点のヒアリングなどに着目してしまいがちですが、そうではありません。メンバーの要求を受け止めつつ、こちらの要求を理解させることが重要です。マネジメントは、一方的に相手に考えを押し付けるだけではなく、情報を共有しながらメンバーに理解をさせ、動機づけモチベートし、メンバーを動かすということが必要です。

また、チームをどういう状態に持っていきたいのかを語れず、実務に関する細かい話ばかりしていては、メンバーはついてきません。

▶関連コラム:効果的な部下との対話の方法


● リーダーシップ、影響力

いちメンバーではあまり求められなかったヒューマンスキルは、マネジャーになると重要になります。責任範囲が増えることで、周りを巻き込んで目標達成に導く必要がでてきます。また、組織が求めること、もしくは上司が求めることと現場のギャップを調整する能力も求められます。

▶関連コラム:部下や関係者の協力を得てチームを成功に導く方法

▶関連コラム:マネジャーに必要なスキルとしてのリーダーシップ


● 意思決定力

マネジメントが行う意思決定は、さまざまなステークホルダーに影響を与える重要なものもあります。重要な判断に迫られても適切な判断をくだすことができる。判断しなければならない時に、逃げたり先延ばししたりしない意思決定力が求められます。単に与えられた選択肢から判断するだけでなく、現状を理解、分析し、その結果として判断を下す能力が必要です。


● 分析力・問題解決能力

マネジメントする組織の規模が大きくなればなるほど、さまざまな問題が発生するため、課題に対する的確な分析力が求められ、さらにその問題を解決する策を導き出す問題解決能力が求められます。課題やリスクを理解し、どの様に解決していくのか判断し推進することが求められます。


● 管理・計画能力

組織で成果を上げるためには、個人で成果を上げることと異なり、複数の人が関わり複雑性が高くなります。目標達成のために必要なリソースや期間を計画しなければなりません。そして、その計画が着実に遂行されるよう、プロジェクトを管理する必要があります。


基本を押さえながら自分の強みを活かしたマネジメントを

いかがでしたでしょうか?

全てを完璧にできる人は中々おらず、多くの人は得手不得手があると思います。ただし、どれか一つだけ極端にできない、やっていないという状態は避けなければなりません。マネジメントは様々なスキルを使い分けていかなければ上手く回らないため、まったく実行できていない部分があるとそこが足かせとなり、効果的なマネジメントが行えません。

苦手な分野については、60点、70点取れるよう自己研鑽し、意識して取り組んでいきましょう。その上で、強みをベースに、自分なりのマネジメントを実行していくことが重要です。

内省支援とは|メンバーの成長を促す振り返りの方法

マネジャーに求められる支援の1つに「内省支援」があります。

業務を進捗させる業務支援、やる気を引き出す精神支援と並ぶ重要な支援で、内省支援はメンバーの成長促進に欠かせません。

しかし、実際の現場では、高い業績目標や業務過多などの影響で目先の業務をこなすことで精一杯になり、振り返りを行っていなかったり、マネジャーからすぐに指示やアドバイスをしてメンバーの内省機会を奪っていたりと、内省支援ができていないケースが多いです。


今回は、内省の意味と、メンバーの成長を促す内省支援のあり方について解説します。


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内省とは?|内省と反省の意味の違い

内省とは、自分の考えや行動などを深くかえりみることです。

近い言葉に「反省」がありますが、その違いについて理解されていますか?


    内省

  • 自分の考えや行動などを深くかえりみること。反省。

    反省

  • 自分の行いをかえりみること。
  • 自分の過去の行為について考察し、批判的な評価を加えること。

内省の説明文に反省があるように、基本的には「省みる」という行為で共通していますが、ニュアンスとして2つの違いが見て取れます。


批判的なニュアンスの有無

反省は、良くない言動を認識して、同じ過ちを繰り返さないようにという批判的なニュアンスを含みますが、内省には批判的なニュアンスはなく、客観的に振り返ることを意味しています。
(良い言動について、何が良かったのか振り返ることも内省です。)


振り返りの「深さ」

反省は、過去の行為について考察するのに対し、内省は「考えや行動などを深く省みる」とあるように、その言動に至った思考や感情まで含めて深く省みることを意味しています。

内省の重要性|経験学習サイクル

内省の目的は、経験を学びに変換し、次の行動に活かすことです。

振り返りをしないのは以ての外ですが、「できた/できなかった」という事実のみ確認する振り返りでは、経験からの学びがほとんど得られません。

成長実感が低い、能力やスキルが向上していないなど、成長の停滞感を感じてしまう1つの原因は、内省ができていないことなのです。


内省の重要性が謳われる背景には、組織行動学者のデービッド・コルブが提唱した「経験→省察→概念化→実践」という4段階からなる経験学習モデルがあります。

教育や人材育成の場面でも、体系化された知識を受動的に習い覚えさせる知識付与型の学習やトレーニングと区別して、実際の経験を通し、省察(≒内省)することでより深く学べるという考え方を「経験学習」と呼んでいます。


経験学習サイクル

  • 経験   :具体的な経験をする
  • 省察   :経験を多様な観点で振り返り、意味づけをする
  • 概念化  :他でも応用できるよう抽象化・概念化し、持論とする
  • 新しい試み:新しい場面で実際に試してみる(能動的に実践)

経験学習サイクルでは、経験を学びに変えるプロセスとして、省察(≒内省)と概念化が重要になります。

「できた/できなかった」の振り返りに留めず、「なぜそうなったか(原因・背景)」「どうすれば上手くできるか(持論・ルール・スキーム)」を考えることで、別の新しい場面でも応用できるノウハウ・スキルとして定着させることができます。

また、その学びを実際に試してみる機会も重要です。内省を経て学びを得た場合は、それを実際に試してみるところまでセットで考えるようにしましょう。

能力に合わせた内省支援|成人発達理論

内省は、客観的に思考や感情まで含めて深く省みることですが、メンバーの能力によっては、客観視することや、原因を深堀りしていくことが苦手で、意識させても能力不足で内省ができないことがあります。

そのためマネジャーは、メンバーの能力に合わせて内省支援を行う必要があります。


「成人発達理論」は、成人してからの知性や意識の発達を考える理論で、メンバーがどの段階か意識することで、必要な内省支援のあり方を検討するのに役立ちます。


① 利己的段階

自己中心的に、自分の関心や欲求を満たすことを考え行動する段階。
相手の立場に立って物事を考える力が不十分。
感情的になりやすく、チームワークが苦手。

<支援の方針> 二人称の視点を育てる
・感情的になりやすい相手に対して、自身も感情的になってはいけない
・客観視が苦手なので、他者・組織・会社といった視点で考えさせるよう問いかける


② 他者依存段階

組織の意思決定基準に従って行動する段階。
相手の立場で考えられるものの、自分独自の価値体系が不十分。
自分の意見を持たない「指示待ち」に近い。

<支援の方針> 自分の考えを言語化させる
・慣習的に行っている仕事について、その仕事の意味やより良い業務プロセスを考えさせる
・新しく任せる仕事について、進め方をメンバーに考えさせ、その意図を問う
・状況や結果の報告だけの場合、「それを踏まえてどうする?」とメンバーの考えを問う


③ 自己主導段階

自分なりの価値体系や意思決定基準ができ、自律的に行動できる段階。
自らに内省的な問いを発して、自分自身を合理的に律することができる。
一方で、自分の価値観に縛られ、異なる価値観や意見を受け入れにくい。

<支援の方針> 既存の価値観を一度打ち壊す(アンラーン)
・相手には相手なりの価値観や論理があることを認め、自分と異なる意見の裏にある価値観や論理を考えさせる
・既存のやり方を一度崩し、別の手法を検証させる(標準化やテクノロジー活用などのミッションを与える)
・異質な他者との接点を作る(新しいプロジェクト、異業種の交流など)


④ 自己変容段階

多様な価値観や意見を汲み取り、他者と関わり合い互いの成長を促す。
他者の成長支援が自分の成長につながるという考えを持つ。
この段階に達してはじめて、人と組織の永続的な成長を促す、真のリーダーになれる。


成人の7割が②他者依存段階、④自己変容段階は1%未満と言われています(※)。

一般的な企業の人員構成では、新人〜若手メンバーが①、中堅〜ベテランメンバーが②、マネジャーや部長が③、事業トップが④というイメージです。

メンバーがどの段階にあるか把握し、それぞれの能力に合わせた支援を意識してみてください。


※参考:加藤洋平『組織も人も変わることができる!なぜ部下とうまくいかないのか「自他変革」の発達心理学』

内省支援の注意点|シングルループ学習、ダブルループ学習

組織における学習プロセスには、シングルループとダブルループの2種類があります。

振り返りを行っている場合も、その内容がシングルループ学習となり、内省を通した深い学びができていないケースが多いです。

メンバーの成長を促す内省支援では、ダブルループ学習が欠かせないため、注意してください。


シングルループ学習

行動の結果から、問題解決を図り、その過程で学習するという考え方です。

行動した結果が想定より悪かった時に、次は時間を変えてみよう、話す順番を変えてみよう、もっと行動しようなど、行動の質や量を変え、改善を繰り返すことで目標達成を目指していくイメージです。

メンバーの思考力を問わず解決策(how)が思いつけば行動できるので、業績達成目的で行う業務支援でよくみられるループです。


メンバーの学びという面では、試行錯誤する中で様々な経験を積んだり、最後は行動量担保でなんとか目標達成させたりと、行動力や粘り強さの面での成長は望めます。

ただ、経験則が活かせる同じ業務では成果が出せるものの、別の仕事になった際の応用力が身につきにくく、経験に基づき感覚的に行動しているため、言語化したり他者に教えることが苦手になりやすいです。

ダブルループ学習

結果に基づき、行動を改善して目標達成させようとする姿勢はシングルループ同様に持ちつつも、内省することで、行動の良し悪しだけでなく、目的や前提条件にまで戻って深く考え直します。

目的に照らして、
「何が問題か(what)「どこに問題があったか(where)」と問題点を特定し、
「なぜそうなったのか(why)」と原因や背景を考え、
「どうすれば解決・改善できるか(how)」と解決策を導くことで、問題解決力が磨かれます。

また、「どうすれば次(も)上手くできるか」と成功のための意識や行動・ルールなどを持論として抽象化・法則化することで、応用が効くノウハウとして定着させることができます。


いかがでしたでしょうか?


内省は、客観的に、深く省みること。

新人や若手メンバーに対する業務支援ではシングルループ学習も必要ですが、ある程度経験した中堅からベテランメンバーには、ダブルループ学習で内省を促すさせることが必要です。


メンバーの振り返りが、成長につながる内省になっているか。

自身の内省支援は、メンバーの能力にあった支援になっているか。


ぜひ一度、内省してみてください。

ファシリテーションスキルとは?|会議、チームを活性化させるマネジメントスキル

社内の会議で上座から席順が決まっており、発言者からの話を聞くだけで、活発な意見交換や議論が生まれない。そんな会議をしていませんか?

マネジャー、リーダーになったものの、そんな会議の経験しかないため、会議進行のスキルを持ち合わせておらず、チーム内の仕事に関するコミュニケーションや、同僚への信頼が高められない方は非常に多いです。

メンバー個人に対するコーチングは研修等で学ぶ方も多いのですが、それだけではチームの関係性を高めることはできません。

そこで有効なのが、ファシリテーションスキルです。

今回は、ファシリテーションについて学んだことがない方に向けて、明日から使えるファシリテーションスキルについて解説します。


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ファシリテーションとは個人ではなくチームに対して影響力を発揮するもの

会議やプロジェクトをスムーズに進行させる能力をファシリテーションスキルと言います。

プロジェクト進行に必須のスキルとして学ぶコンサルティングファームの方を除くと、あまり馴染みのない言葉かもしれません。

コーチングが「個人」に対して行うものに対し、ファシリテーションは「チーム」に対して行うものです。

管理職研修等で、コーチングについてはある程度学んでいる、知識がある方が大半ですが、ファシリテーションスキルについては、特段知識を持ち合わせていないという方がかなりの数いらっしゃいます。

マネジャーとメンバーの間の信頼関係を構築した後は、チームとしての信頼関係を作っていく必要がありますが、ここで多くの方がつまずいてしまいます。ファシリテーションスキルは「チーム」の関係性を高めるためになくてはならないものなのです。


  • コーチング
    個人に対して、考えや行動を振り返ることで得られる本人の気づきにより自律的な問題解決を促す

  • ファシリテーション
    チームに対して、メンバー同士の相互作用から得られる気づきにより自律的な問題解決を促す

ファシリテーションスキルとは?|基本的な4つのスキル

ファシリテーションスキルには、基本的な下記4つのスキルがあります。


  • 1. 場のデザインのスキル : 場を作り、繋げる
  • 2. 対人関係のスキル   : 受け止め、引き出す
  • 3. 構造化のスキル    : かみ合わせ、整理する
  • 4. 合意形成のスキル   : まとめ、共有する

1. 場のデザインのスキル

会議やプロジェクトの場を作り、メンバーの対話を促進するためのスキルです。単に人が集まってもチームにはなりません。

目標の共有からチームワークの意識の醸成といった、基礎となるチームビルディングが大きく影響を与えます。

実際の現場では、それだけでは不十分で、雰囲気を作ったり、議論を活性化させるための場の仕組み・配慮が必要です。マネジャー、メンバー、ベテラン、新人とプレッシャーの度合いが大きく異なります。


具体的には下記のような活動です。

① なにを目的にして、誰を集めて、どういうやり方で議論するのか、といった話し合いの前提の設計

② 論点の整理と、メンバーへの共有

③ メンバー同士の関係性を適切にデザインし、話しやすい場をつくる


特に、③の場のデザインについての知識を持っておらず、議論が活発にならないケースが良く見られます。人は環境によって振る舞い方が大きく変わるため、場をデザインするだけでも会議は変わります。


2. 対人関係のスキル

相手の意見を受け止めたり、アイディアを引き出すためのスキルです。

できるだけたくさんの意見や考えを出し合うには、参加者の心理的障壁を取り除き、しっかりと意見を受け止め、発言者を勇気づけ、本当の考えを引き出していかなければなりません。


3. 構造化のスキル

異なる意見をかみ合わせたり、出てきた意見を整理するスキルです。

議論の全体像、個々の意見を分かりやすく整理して、議論すべき論点やどれを採用するのかを絞り込んでいきます。ここではロジカルシンキングのような思考系スキルや、物事を構造化するフレームワークを知っていると、効率よく議論が展開できます。


4. 合意形成のスキル

参加者みんなが納得する形で意見をまとめるスキルです。

どのアイディアを採用するのか決めることはもちろんのこと、参加者全員が程度の差こそあれど納得している状態を作ることが求められます。

この時に避けて通れないのが意見の対立です。なにを基準にして最適な選択肢を選ぶのか、異なる意見をどうやって融合させるのか、決め方の認識を合わせることがファシリテーターに求められます。合意形成がきちんとできると、メンバーの腹落ち度、チームの結束力も高まります。合意ができれば、結論やネクストアクションを明確にします。

明日から使えるファシリテーションスキル|場のデザインのコツ

ここまでファシリテーションスキルについて理論的な部分についてまとめましたが、実際に明日から使えるコツについていくつかご紹介します。


始めに参加者に自分の意見を紙に書かせる

会議が始まって全体に発言を求めると、発言力のある人を中心に会議が進んでしまいます。そのため、まず参加者に自分の意見を紙やポストイット等に書き出してもらうようにし、次にその書かれたことを全員が発表するような進行にします。

こうすることにより、無理なく全員の意見を全員で共有する会議となります。

一度紙に書き出された意見は、誰が言ったかではなく、ひとつの意見として検討されていきます。この方法を使えば、普段、会議においてほとんど発言できない人でも、自分の意見を会議のテーブルに乗せることができ、先輩や偉い人の意見とも平等に検討されます。


上座、下座といった席順にしない

上目の者から席順が決まっている文化の場合は、それをマネジャー自らが崩してしまい、メンバーが座る位置をランダムにしてしまうのも効果的です。そうした理由での位置の固定は若いメンバーを傍観者にしやすく、発言者の偏りを生んでしまいます。場の力はあなどれません。


参加者に意見を整理させる

ファシリテーターが自分で整理するのではなく「参加者に整理させる」のもひとつの方法です。

ファシリテーターは、意見がある程度出てきたら 「皆さん今出された意見を整理するとどうなりますか?」と問いかけます。

参加者が出された意見を整理するのはファシリテーターの仕事と思っている場合、ファシリテーターの動きを期待し、参加者に主体性が生まれません。前段できちんと全員の意見が出せているのであれば、心理的な障壁は無くなっており、整理することにおいても、参加者からどんどん意見が出てくるはずです。参加者の主体性を引き出すためには、ファシリテーターがやってしまわないで、我慢して参加者が整理していく姿を見つめることも有効です。


反対意見を問う言い方をしない

「今の発言に対して意見はありませんか?」と問うてはいけません。この言葉は対立を生んでしまいます。対立的になるのは参加者の仲が悪いせいではなく、会議の進行そのものが、対立を生むようになってしまっているためです。

「他の意見はありませんか?」という聞き方をしましょう。この聞き方では、反対意見を集めるのではなく、できるだけ多様な意見を聞こうとしています。

「今の発言に対して意見はありませんか?」と「他に意見はありませんか?」では、会議の雰囲気が大きく違ってきます。


意見を選ばせるのではなく、ひとつにまとめさせる

意見を整理し、何らかの結論を出すタイミングで、ファシリテーターが意見を選ばせる代わりに、「整理されたものを、ひとつの意見にまとめてください」と言うことは参加者の納得感の醸成に非常に有効です。

「いい意見を選んでください」ではなく、「ひとつの意見にまとめてください」と言うことで、個人の考えた意見から選ぶのではなく、みんなの意見を参考に個人で考えた以上の意見をみんなで考えるという形にすることができます。これは、対立ではなく「共同」を生む進行となり、会議の雰囲気に大きく影響を与えるとともに、参加者の対立を排除し、納得感を作ります。


書いて残す

会議では必ずホワイトボードを使いましょう。オンラインであれば、参加者共通のファイルで書きながら進めましょう。

書いて見える化しなければ、参加者で同じ認識が持てず、食い違った理解のまま話し合いをしているということが起きやすくなります。また、たくさんの出た意見も忘れてしまいます。可視化されていない状態では議論は的を得ず、お互いの言いたいことを理解し合うには圧倒的に効率が悪くなります。


完璧を求めない

合意形成においては、多数決で決めても構いません。多数決で決めても文句が出ない(少ない)状況を目指しましょう。

「合意」の理想とは、「最善の策に全員が納得すること」です。ただし、これは現実的にはかなり難しいと言えます。

「全員で十分に意見を出し合ったのだから、最善の策ではないかもしれないけれど、とにかく全員で一度やってみよう」という合意で良いのです。70%の策かもしれないが、とにかく全員が一致して一度は取り組んでみることができる組織は、お互いを尊重することができ、実行力のあるチームです。

全員が「ここまで話したのだから多数決で決めるしかないな」と納得していることこそが大切です。

早速ファシリテーションスキルを使ってみよう

いかがでしたでしょうか?

ファシリテーションにおける場のデザインは、方法やコツを知ればすぐに実行に移すことが可能です。

チームの関係性を高めるファシリテーションを、早速明日からはじめてみてください。

業務支援とは|メンバーの成長を促す業務支援のポイント

業務支援は、マネジャーであれば誰もが実施していると思います。

しかし、その支援方法はまちまちで、ここにマネジメント力の差が出てきます。

同じ時間を使うなら、より効率的、効果的な支援にしたいはず。

今回は、マネジャーに求められる3つの支援を意識しつつ、業務支援のポイントについて解説します。


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マネジャーに求められる3つの「支援」

支援とは、「力を貸して助けること」。

例えば、メンバーの仕事が遅いからと自身が代わりに対応することも、進め方1つまで細かく指示をすることも、任せきりにして失敗した際にお詫びに同行することも、捉え方によっては支援と言えるでしょう。

しかし、これらの支援の仕方では業務は進捗したとしても、メンバーの成長機会を奪ったり、自律性を損ないモチベーションを低下させたりと、マイナスの影響もあるため、効果的な支援とは言えません。


多くのマネジャーは「組織の目標達成」と「メンバー育成」の役割を担っています。

会社は毎年成長し続けることを求められるため、組織の目標も年々高まる傾向があり、継続的に成果を出し続けるには、メンバーの成長が欠かせません。

会社内での出世を希望せずワークライフバランスの取れた働き方を望む人など働き方の価値観も多様化しているため、メンバーの動機づけも重要度が増しています。


そのためマネジャーは、単に業務を支援するだけでなく、以下の3つの支援を意識的に行うことが必要になっています。


マネジャーに求められる3つの支援

  • 業務支援:適切な仕事を任せ、相談やアドバイスをすることで、業務を進捗させる
  • 精神支援:職場環境や人間関係を良好に保ち、内発的動機づけでやる気を引き出す
  • 内省支援:客観的意見や新たな視点を与え、振り返る機会を作ることで成長を促す

精神支援、内省支援は別の機会に詳しく解説しますが、メンバーのやる気や成長機会を奪うような支援が効果的でないのは理解いただけたと思います。

業務支援は仕事を任せるタイミングから始まる

メンバーのやる気や成長機会を奪う業務支援にならないようにするには、どのような意識が必要でしょうか?

業務支援は、何か問題が起きた時にサポートする、指導するというように発生ベースで対応を考えている方が多いですが、実は業務をアサインするタイミングでの仕事の任せ方も大きく影響します。


例えば、「いついつまでにこれをお願い」と納期だけ示してアサインした場合、メンバーは目的や背景を想像して仮説の中で進めなければなりません。

アサイン時に伝えれば迷わず進められることを時間をかけて考え、その上間違った解釈で進めてしまう可能性も出てしまいます。結果、数時間かけたのに最初からやり直しという悲劇もあり得ます。

このように、アサインタイミングでいかにきちんと仕事を任せるかによって、メンバーの仕事の進めやすさも業務支援にかかる時間も変わってきます。

仕事を任せるところから具体的な支援・フィードバックまでを全体的に捉え、予め業務支援のあり方を体系立てて理解しておくことが重要です。

仕事のアサインタイミングで意識すること

意識

  • 業務遂行の視点だけでなく、育成の視点、動機づけの視点を持つ
  • 自分と全く同じ進め方を期待しない(メンバーの工夫を受け入れる)

行動

  • アサイン時、目的や制約条件をしっかりと説明する
  • 理由や期待を添えて仕事を任せる
  • 中間報告を求め、そこまではメンバーに任せる

意識すべきは、育成や動機づけの視点を持ち、自分と全く同じ進め方を期待しないことです。

業務遂行の視点だけで考えると、1から10までやり方を指示してタスクをこなしてもらう仕事の任せ方も効率的に見えます。

業務支援は少なく済むかもしれませんが、メンバーは自己決定感を感じることができず、ただ作業をこなすことになり、やりがいを感じることができなくなります。


アサイン時は、目的や制約条件をしっかりと説明することで、ゴールイメージをメンバーと共有しましょう。ゴールイメージさえ目線合わせができていれば、メンバーは遠回りしてでも着実にゴールに近づくことができます。

また、アサイン時に納期を伝えるだけでなく、中間報告を依頼しましょう。万が一の場合にもフォローできる時点に報告タイミングを設けておくことで、そこまではメンバーに任せることができるようになります。

さらに、メンバー側から報告や相談をするようになると主体性が生まれ、その場でフィードバックすることで成長機会にもなります。


詳しくは、別のコラムでまとめていますので、併せてご確認ください。

▶ 仕事の任せ方|業績達成と育成を両立させるジョブ・アサインメントの方法

業務支援で意識すること

意識

  • メンバーの成長のためにフィードバックする
  • タイムリーにフィードバックする(経験が新しいうちに)

行動

  • 承認と指摘のバランスを意識する(指摘だけにならないように)
  • 具体的な改善点やその理由をフィードバックする
  • 相談しやすい状況を作る(物理的、感情的に)

マネジメントの場面では、どうしても誤った行動や非効率な進め方に目が向きます。それ自体は自然なことで、メンバーの仕事ぶりを把握できているのは良いことです。

重要なのは、どのように指摘すればメンバーの成長につながるか

この意識を持っていると良い業務支援ができるようになります。


メンバーの気になる行動があった時は、放置せずにその場で一言声をかけましょう。

その人なりの理由があってその行動をとっているはずですが、数日後ではその時の感情やロジックを覚えていない可能性もあり、フィードバック効果が薄れます。

時間がない場合は、最悪メモやメッセージでも構いません。

タイムリーにフィードバックすることを意識してください。


業務支援の場面で多いのは、支援のつもりが指摘するだけになっているケースです。

メンバーが自分なりに考えて業務を進めている中で、マネジャーから指摘ばかりされたらどう感じるでしょうか?

人は誰しも承認欲求を持ち、認めてもらえず指摘ばかりされるのは、内容がいかに真っ当で正しくても、感情的にマイナスです。

承認のポイントは、結果承認だけでなく、プロセス承認、行動承認、意識承認、存在承認などもあるので、何かしら良い点として認めることができるはずです。

「積極的に行動しているのはとてもいいね。」と行動承認をした上で、「もう少し〜〜を意識してみて」とアドバイスしたり、「どんな意図(目的)でその行動を選んだの?」と指摘したいポイントの話を進めるなど、承認とセットで伝えるようにすると、メンバーの感情的にも素直に受け止めやすいフィードバックになります。


また、「それは違う」「成功するイメージがない」など否定だけで終えず、その理由や具体的な改善点までフィードバックするようにしましょう。

何が良くないのか原因がわからないものは、メンバーも改善のしようがありません。また、理由はあなたの判断軸そのものなので、判断軸をメンバーに伝えることで今後同じような場面での応用も効くようになります。


メンバーから相談しやすい状況を作るのも重要です。

生産性を考えても、悩んだり迷っている時間が最も非効率です。

仕事を任せる時に中間報告を求めることで、納期まで悩み続けるリスクは無くせますが、中間報告までの期間悩んで過ごすのも勿体ないです。メンバーから相談しやすい状況を作っておきましょう。

「相談しづらい」と感じるのは、物理的理由と感情的理由があります。

マネジャーが忙しく物理的に相談する時間がないという場合は、先輩メンバーにメンターの役割を任せ、若手が相談しやすい状況を作るのがおすすめです。

感情的理由は、評価への影響や叱責を受けるのを危惧して相談しづらいという信頼関係ができていないことが原因のものだけでなく、マネジャーが忙しそうで声をかけづらいなど配慮からくる相談しづらさもあります。

後者の場合、予め共有予定表などで「相談タイム」を設けてメンバーに分かるようにしておくと、メンバーはその時間に相談をくれるようになり、マネジャー自身もその他の時間は業務に集中しやすくなります。



ポイントが多く長くなりましたが、業務支援はメンバーの成長のために、仕事のアサインから支援までを全体として捉えて考えるとうまく行えるようになります。

アサイン時に目的や制約条件をしっかりと説明し、中間報告を求める。

悩む時間を極力減らすために、相談しやすい状況を作る。

指摘だけで終えず、何が良くないのかその理由や具体的な改善ポイントを伝える。

これらのポイントを意識して、メンバーの成長につながる業務支援を心がけてみてください。

やりがいとは|仕事のやりがいを高めるマネジメントの方法

あなたのチームメンバーは、仕事にやりがいを感じていますか?

マネジメントする上で、メンバーがやりがいを感じるポイントを理解していますか?


メンバーが仕事にやりがいを感じているかどうかで、仕事への熱量が変わり、組織としてのパフォーマンスが変わってきます。

転職の一般化により、仕事のやりがいを軽視していると、社員の離職につながってしまうこともあります。


仕事のやりがいを高めることは、組織として高い成果を出し続けるために欠かせないマネジメントの1要素です。

今回は、仕事のやりがいを高めるマネジメントの方法について解説します。


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やりがいを感じるポイントは人それぞれ

仕事のやりがいとは、「仕事をするだけの価値と、それに伴う気持ちの張り」を言います。価値があるかを判断するのは当人なので、「何にやりがいを感じるか」は人それぞれに違います。

メンバーにやりがいを感じるポイントを聞くと、実に多様な回答が返ってきます。


やりがいとは

  • 社会貢献している実感が持てること
  • お礼や感謝の言葉をもらうこと
  • 自分の仕事を認められること
  • 頑張りに見合った評価や報酬を得ること
  • 目標を達成すること(仕事をやり遂げること)
  • 自分の能力を十分に発揮すること
  • 能力やスキルが向上すること
  • 自分の成長を実感すること
  • 新しい仕事にチャレンジすること
  • 自分で決める裁量があること
  • 影響範囲が大きい責任ある仕事をすること
  • 興味のある仕事をすること
  • 尊敬できる人と一緒に仕事をすること
  • チームで仕事をすること
  • 部下の成長を感じること

このように、それぞれの価値観の違いでやりがいを感じるポイントは異なります。

そのため、全社的な取り組みだけでやりがいを高めることは難しく、やりがいを高めるには個別的なアプローチが必要です。


信頼を構成する3要素とは?|マネジメントの前提となる信頼関係の築き方

まずは互いの価値観を理解し、信頼関係を築くこと

やりがいを高めるための土台となるのは、上司や同僚との信頼関係です。

人間関係は、低いと不満を招く要因(衛生要因)です。同僚との関係が悪いと帰属意識やチームの一体感は生まれず、一緒に仕事をしたい、チームに貢献したいという感情も芽生えません。

マネジャーがメンバーと信頼関係を築けていない場合は、メンバーからの協力を得にくく、組織をマネジメントできません。メンバー同士の間を取り持ち関係性を良化する役割も担えません。


上司や同僚との信頼関係が低い場合は、まずはコミュニケーション量を増やし、互いの価値観を理解しあうことから始めましょう。

メンバーの価値観を理解することは、メンバーがやりがいを感じるポイントを知るのにも役立ちます。


価値観を言語化するのはなかなか難しいため、きっかけとして「ソーシャルスタイル診断」や「ストレングスファインダー」などのツールを用いるのもおすすめです。

言動のタイプや、当人が持つ強みや資質が事前にわかると、それをもとに会話を広げ、理解を深めていくことができるので、短い時間でメンバー理解を進めることができます。

▶ 価値観とは?|メンバーの価値観を理解する重要性


役割や目標を明確にする

① 組織の役割や目標を明示する

メンバー個人の目標設定の前に、マネジャーから組織の役割や目標を明示することが大切です。

例えば、「社会貢献したい」という価値観の場合、会社としては社会貢献性が高い事業をしていても、細分化した組織の中で与えられた業務が、本当に社会のためになっているのか?という疑問を抱くケースが少なくありません。

マネジャーから組織の役割を明示し、仕事の意義を語ることで、社会に貢献している感覚を持たせることができます。


どんな山を登ろうとしているのか。組織の目標を明示することも重要です。

目標とする地点の目線合わせができていない中でメンバーに目標設定を依頼すると、組織目標に連動しない個人目標になってしまいます。

これでは、個人目標を達成しても、組織目標が達成されないことが増え、「達成したのに評価されない」という不満につながってしまいます。

メンバーに目標設定を依頼する前に、必ずマネジャーから組織の役割や目標を明示するようにしてください。



② メンバー個人の目標設定を行うこと

目標管理制度(MBO)やOKRなど種類は別として、多くの企業でメンバー個人の目標設定を行い、それに基づいた評価、報酬の体系をとっています。

「目標を達成すること」「頑張りに見合った評価や報酬を得ること」からやりがいを感じる人も多いため、目標設定の形骸化は、やりがいを低下させる要因になります。

目標設定のポイントは、以下コラムでまとめていますので、併せてご覧ください。

▶ 目標設定のやり方|気をつけたいポイント


メンバーの価値観と結びつけ(意味づけして)業務をアサインする

組織には組織の役割があり、やらなければならない業務があります。

マネジャーは、メンバーに業務をアサインし、組織として成果を最大化することを考える必要があります。

誰に、どの業務を、どのように任せるか。ここに、マネジメント力の差が出てきます。


なぜあなたに任せたいかを説明せず「来週までにこれやって」と業務を依頼したり、「やるべき仕事だから」「他にできる人がいないから」「やって当然の職務/職位だから」という会社/組織都合の理由で仕事をアサインしていませんか?


メンバーの価値観を理解していれば、やりがいを感じる文脈で業務を意味づけしてアサインすることができ、そうすることで業務へのやる気を高めることができます。


「能力やスキルが向上すること」がやりがいになるメンバーには、

「自社サービスを組み合わせた総合的な提案ができるようになりたいと言っていたよね。今回の顧客はそのチャンスがありそうだから、○○さんに任せたい」


「影響範囲が大きい責任感ある仕事をすること」がやりがいになるメンバーには、

「このプロジェクトは、当社のサービスの新しい柱になる可能性がある重要なプロジェクト。少しレベルが高いかもしれないけど、フォローするのでやってみない?」


会社や組織の都合(Must)だけで業務をアサインするのではなく、メンバーのやりたいこと(Will)やできること(Can)にも着目して、仕事の任せ方にも気をつけてみてください。

メンバーの自主性・主体性を引き出す正しい『権限委譲』とは?

フィードバックや承認称賛で、やりがいを感じるタイミングを作る

「お礼や感謝の言葉をもらうこと」「自分の仕事を認められること」など、フィードバックや承認・称賛を受けることによってやりがいを感じる人も非常に多いです。

承認欲求は人の根源的な欲求であり、誰もが人から認められたいと思っています。

ただ、人によって認められたいポイントは異なるため、メンバーそれぞれの価値観に合わせて承認・称賛を行えるとベストです。


しかし、マネジャーは「できるプレイヤー」だった方が多いため、このくらいできて当然、当たり前と感じてしまい、承認・称賛が苦手という方も多いようです。

承認・称賛はテクニックなので、承認するポイントを押さえれば意外と簡単にできるようになります。

以下コラムで、5つの承認レベルについてまとめていますので、参考にしてください。

▶ 承認・称賛とは?|1on1でも重要な承認と称賛の使い方

仕事のやりがいは、非常に多くの要素が影響しており、メンバーの価値観を理解した上で個別アプローチで解決していく他ありません。


メンバーとの信頼関係を築く。

役割や目標を明確にする。

メンバーの価値観に結び付けて業務をアサインする。

フィードバックや承認称賛を行う。


マネジャーとしての役割を1つ1つ着実に実行していくことで、結果としてメンバーが仕事にやりがいを感じられるようになります。

自身のマネジメントを振り返り、できていないことを順番に改善していきましょう。

リーダーになって感じる孤独|昇進うつ、管理職のうつにならないために

役職がつきマネジャーになった、課長になった。多くの人にとって昇進は喜ばしいことですが、いざ実際に業務を始めると「孤独」を感じ、大きなストレスになってしまう方が一定数いらっしゃいます。


一般社団法人日本産業カウンセラー協会の調査によると、下記のように中間管理職の方々が多い年代に、メンタルの問題が多いことが分かります。

・メンタル不調の悩みの約4分の1は40代男性から

・男女とも相談の7割が30代~50代

・メンタル不調・病気の相談は男性は女性の2倍以上

※参考:https://www.counselor.or.jp/Portals/0/pdf/1.press%20release1901.pdf


メディアでも、中間管理職のうつ、昇進うつ、といったワードで、マネジャーのメンタルの問題は度々取り上げられてきました。この点に課題意識を持ち、悩まれている企業も少なくありません。

さらに、現在は「コロナうつ」なる言葉も出てきており、これまで以上にストレスを感じやすくなっている状況です。


今回は、マネジャーにとっての孤独について考え、マネジャーの心構えとその対処法について解説します。


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なぜマネジャーはなぜ孤独を感じやすいのか?|マネジャーの仕事量は増えている

メンバーとマネジャーでは、プレッシャーの度合いが大きく異なります。まずは、そのプレッシャーの要因について知っておくことが重要です。こうしたプレッシャーが増えるんだなと心構えをしておきましょう。


多くの管理職も同様の状況に置かれており、あなただけでなく、誰もが多かれ少なかれ孤独を感じています。

具体的には、下記のような要因があります。



・責任範囲・業務量の増加

メンバーのマネジメントが初めて業務に入ってくることになりますが、複数いるメンバーのマネジメントは思った以上に大変です。コミュニケーションに多くの時間を取られます。

産業能率大学が発表した『第5回上場企業の課長に関する実態調査』では、課長職の実に98.5%が、自身でプレイヤー業務を抱えており、そのような中で、部下とのコミュニケーションに最も多く時間を割いていることが分かりました。プレイングもマネジメントもマネジャーは非常に忙しい状況が見て取れます。

また、3年前と比べ業務量が増えていると答えた課長は約6割。悩みのTOPは仕事量が多すぎる、でした。

※参考:https://www.sanno.ac.jp/admin/research/kachou2019.html


・相談できる人の減少

立場が上がっていけばいくほど、相談できる人が少なくなります。隣のマネジャーに相談するのは心理的に難しいでしょうし、社内だけではアドバイスができる人も限られてきます。


・褒められる機会の減少

管理職になるような方は、パフォーマンスを出していた方であり、メンバーの時は、成果や行動について褒められる機会が多かったと思います。しかし、マネジャーになるとそういった機会は減少します。結果責任が求められるので、プロセスについては評価されず、結果でしか評価されなくなり、承認称賛される機会は大きく減少します。


・自分をフォローしてくれる人が少なくなる

メンバーの時には、先輩や上司が助けてくれることもあったと思いますが、管理職ともなると、困難も自分で乗り越えなくてはなりません。ひとりで判断して進めなければいけない場面が大幅に増えます。


・弱みを見せにくい

周囲に弱みを見せにくくなります。弱いリーダーと思われてしまうからです。困難な状況でも強くあろうとすることは、緊張状態を発生させますので大きなストレスになります。

管理職の孤独は誰もが感じるもの|どうやって対処すべきか

業務量が増えている中では、いかに任せていくかを考えなければ、どんどん業務量が増え、プレッシャーが大きくなってしまいます。

メンバーへの権限委譲のコツについては、下記コラムを参照ください。

▶ 仕事の任せ方|業績達成と育成を両立させるジョブ・アサインメントの方法


孤独を感じた時どうしたらいいか。これをしたら必ず解決するという特効薬はありませんが、管理職の孤独に対処する方法について、管理職、企業それぞれの面からいくつかご紹介します。


<管理職として>


  • ・成長のチャンスだと捉える
  • どんな人にも、程度の差はあれ孤独を感じる瞬間は必ずあります。あなただけでは有りません。リーダーシップを獲得する過程に必要なものと思い、成長のチャンスと捉えましょう。

  • ・誰よりも汗を流すこと(率先垂範)
  • 周りがついてきてくれない時は、誰よりも汗を流しましょう。まずは、2割の賛同者の心を掴むことです。賛同してくれる2割ができたら、その意見を聞きながら進め方を決め、6割の傍観者に役割を与えながら巻き込んで行きましょう。否定的な2割の変化はマネジメントに限らずどんな時でも難しいものです。焦らずすぐの変化を期待しない、否定者の2割に気持ちを取られないようにしましょう。

  • ・ビジネス書を読む
  • 一人で悩まず、その時に読みたいなと思うビジネス書を手に取りましょう。現状を改善するヒントが得られたり、勇気をもらえるはずです。セオリーや他社の実体験からの学びで問題解決の糸口になるかもしれませんし、困難を乗り越えた経営者の本に、自分の悩みがちっぽけに見え勇気をもらえるかもしれません。

  • ・社外のビジネスパーソンと接点を持つ
  • 社内の人に相談すると、俺もそういう時期があった、こうして乗り越えたという励ましはもらえますが、極めて限定的な個人の体験で時代も異なりあまり有用でなかったり、精神論を諭され、内にこもってしまうことになりがちです。
    悩んだ時は、視野を広げる、新しい視点を得るためにも、他社の人と積極的に会いましょう。そして教えを乞いましょう。社外に対しては体面を気にしたり、変にプライドを持つ必要もありません。違う価値観を知ることで、今ある孤独と向き合えるようになったり、悩んでいたことが大したことでないと感じたり、解決方法が見つかったり、新しい発見があるはずです。

  • ・時には弱みを見せて良い
  • 弱みは見せれない、失敗できない、そんな風に考え、肩肘を張って強いリーダーでなければと思う必要はないのです。完璧主義で人間くさくない上司の社員アンケート調査の結果は、大概低いものです。時には自分の弱さをみせてもいいのです。弱さをさらけ出せることも強さです。


<企業として>


  • ・社員自身のセルフチェックを促す
  • ストレスチェックもそうですが、新任管理職研修時には、管理職自身も心理的な病気になるリスクがあることを認識してもらいましょう。多くの企業ではメンバーのメンタルケアについては対応方法等の話をしても、本人たちが昇進により病んでしまう可能性を想定していません。

  • ・社内外のカウンセラーなどによるケアを充実させる
  • 社内にメンタルヘルスの専門家がいない場合、外部機関やサービスも検討しましょう。また、管理職はプライドも仕事の自信もある程度持っている人がなっているため、最悪の状態になるまで自ら相談にいかない傾向があるため、相談を促すこと、そういうものがあることを周知することが必要です。

孤独を感じたら、悲観せず行動を変えてみよう

いかがでしたでしょうか?どのような立場のリーダーであれ、多かれ少なかれ孤独を感じる場面を経験しています。


乗り越える過程での難しさは誰にもあり、変に自身の能力不足やリーダーとしての向き不向きとして悲観する必要は有りません。

独りで殻に籠もって悩むのではなく、行動を変えたり、教えを乞うたり、視点を変えたりしながら、リーダーの孤独を乗り越えて行きましょう。

【メディア掲載】マネトレの取材記事が掲載されました

顧客体験にまつわる情報発信メディア「CX Lab.」様に、当社サービスにて取材いただきました。

普段マネトレを利用いただいているマネジャーの方々をサポートしているカスタマーサクセス部門について取材いただいており、サービス利用をイメージしていただける内容となっております。
ぜひご覧ください!

▶企業の成長を助ける「マネトレ」でマネジメント力を高め、強い組織づくりを。

心理的安全性を高める前に必要な3つの前提|強いチームづくり

「心理的安全性」というワードを一度は聞いたことがあると思いますが、あなたは正しく理解していますか?

心理的なストレスが少ない環境のことではありませんし、仲が良いアットホームな職場のことでもありません。

言葉だけが一人歩きし、誤った解釈で広がってしまっていることが少なくないようです。


今回は、心理的安全性について正しく理解し、心理的安全性の高い組織を作るためにマネジャーが意識すべきポイントをまとめます。


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心理的安全性とは?

注目を集めるようになったきっかけは、Googleの「プロジェクトアリストテレス」。

社内で効果的なチームの特徴を明らかにするために行った大規模なリサーチプロジェクトですが、その成果報告で「心理的安全性がチームの効果性を高める重要な要素」と結論づけています。


ちょうどワークライフバランスや働き方改革が叫ばれるようになったため、生産性を高める要素として「心理的安全性」に注目が集まったわけです。

ただ、標語のようにワードだけが広まり一人歩きした印象もあり、誤った理解をされている方も多いです。

まずは、提唱者であるハーバード大のエドモンドソン教授の定義をご紹介します。


  • チームにおいて、他のメンバーが自分が発言することを恥じたり、拒絶したり、罰をあたえるようなことをしないという確信をもっている状態であり、チームは対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態

単に、人間関係が良く相談しやすい状態ではなく、「対人リスクをとるのに安全な場所」というのがポイントです。リスクを取ること前提とした概念です。

対人リスクとは、他のメンバーとの関係性を悪化させる可能性があるリスクのことを指します。


例えば、自分の弱みを見せることは対人関係のリスクです。

無知:「こんなことも知らないのか」と思われるのが不安で相談しづらくなる。

無能:「こんなこともできないのか」と思われ流のを恐れ失敗を認めづらくなる。

これらは、組織のパフォーマンスを低下させたり、コンプライアンス違反や顧客トラブルの種になってしまうため、注意が必要です。


また、意見を対立させることにもリスクを感じます。

チーム議論をする際、完全に同じ意見でなくても同調してしまうことはありませんか?

一見、皆が同じ意見に賛同して結束したチームに見えますが、同調圧力が働いたり、人間関係を悪化を恐れて発言を躊躇する状態は、心理的安全性が低い状態です。

反対意見が出ることが少なく、スムーズに物事が進む場合は、以下の心理状態の可能性があります。

ネガティブ:「チームの輪を乱してしまうかも」と不安になり、意見を言えなくなる。

邪魔:「あの人のせいでことが進まない」と思われるのが不安で発言しづらくなる。

心理的安全性が高い状態は、適切に意見をぶつけ合うことで、より良いアイデアを産み出したり、皆が心の底から納得して前に進んでいける状態です。


「信頼」を構成する3つの要素とは?マネジメントの前提となる信頼関係の築き方

心理的安全性が組織にもたらすメリット

心理的安全性が高い組織にすることで、以下のようなメリットがあります。


① イノベーションや改善の推進

新しい意見を出すことに不安を感じることがなければ、メンバーは考えを表に出しやすくなります。

三人寄れば文殊の知恵と言いますが、他人のふとした思いつきやアイデアが問題解決の糸口になったり、イノベーションのきっかけになることは少なくありません。

1人の意見に対して、他のメンバーがより良い方法について考え意見してくれるようになれば、アウトプットの質も変わってきます。


② メンバーの成長(能力・スキルの向上)

意見や指摘が少ないというのは、仕事を前に進めやすい反面、チェックの目が甘く、基準(妥協点)が低いアウトプットになりやすいです。

新人の時はあれこれ指摘されますが、数年経つとあからさまなミスも減り、指摘されることも少なくなります。

意見や指摘を受けない状態が続くと、「自分は有能だ」と感じるようになります。有能感自体はモチベーションにプラスなのですが、一部の意識が高い人材を除いて努力量が減ってしまう場合が多いです。

心理的安全性が高く、互いに意見をぶつけ合える組織では、より良い方法を考える癖がつき、新しい知識やスキルを習得することに意欲的な人材が生まれやすくなります。


心理的安全性を高め、イノベーションや改善が進み、メンバーが成長することは、組織のパフォーマンスを継続的に高めていくことにつながります。


メンバーの自主性・主体性を引き出す正しい「権限委譲」とは?

心理的安全性のための3つの前提

心理的安全性が高い組織を作るためには、いくつかの前提があります。

前提が満たされない中で進めると、組織のパフォーマンスを下げる逆効果になる可能性があるため、注意が必要です。


① 人としての信頼関係ができていること

「対人リスクをとっても関係性が悪化しない」というのは、メンバー同士の信頼関係ができていることが前提にあります。

人事異動でメンバーが入れ替わった場合や、新卒や中途社員がジョインしたタイミングなど、最初は互いに探り探りで多少相手に気を使いながら接すると思います。

徐々に相手の価値観を理解していき、少しずつ自分を出せるようになる。

この過程を飛ばして、同僚への信頼関係が悪い中で心理的安全性を高めようとすると、相手の価値観を理解していない中で意見をぶつけるため、軋轢を生む可能性が高く、逆効果になります。

心理的安全性を高めようとする前に、メンバー同士の信頼関係が築けているか確認してみてください。


② 役割や目標が明確になっていること

役割や目標は、物事を判断する上での指針になります。

メンバー同士が互いに意見をする際、指針がなければ好き勝手な意見が飛び交うことになります。それぞれが考える正しさに従って意見されるため、収集がつかなくなってしまいます。

組織としてパフォーマンスを最大化するためには、共通の判断軸が必要です。

役割や目標がその役目を果たしてくれます。

議論で意見が散らばってしまう場合は、メンバーに共通の判断軸ができてない可能性があるため、マネジャーから役割や目標を明示して議論の方向性を定めましょう。

マネジャーが普段から役割や目標をもとに一貫した判断を意識していけば、徐々にメンバーにも浸透していきます。


③ 仕事の質に対して高い要求水準が求められること

仕事の質に対して要求水準が低い状態で心理的安全性を高めると、「ぬるま湯組織」「仲良しクラブ」と揶揄される組織になってしまいます。

仕事の質が低い中で「まあいいや」と妥協してしまうと、その水準が妥協点となり、組織内の要求水準を規定します。

低い要求水準は容易にクリアできるため、メンバー同士で指摘し合い、より良いアウトプットを出そうとする意識が薄れます。

逆に、高い要求水準が染み付いている組織で心理的安全性を高めれば、マネジャーがいなくても互いのチェック機能が働き、変わらぬアウトプットが出せる強い組織になります。

これら3つは、心理的安全性を高める前に、前提として整えないといけないことです。

組織づくりには順序があり、順番を間違えると逆効果になることもあります。

心理的安全性を高めたいと思った時は、一度前提条件が満たせているか確認をしてみてください。

マネジャーに求められる情報伝達とは|役割や目標を明示することの重要性

マネジャーの基本的役割として、「情報関係」「業務遂行関係」「対人関係」「コンプライアンス関係」の4つがあります。

日本経済団体連合会の報告書によると、それぞれの役割は以下を指します。


マネジャーの基本的役割

  • 情報関係:経営の目標や方針を組織に浸透、現場の必要な情報を経営に伝達など
  • 業務遂行関係:組織の課題解決、業務効率化の推進など
  • 対人関係:部下の指導・育成、仕事に対する動機づけ、部下同士の協働促進など
  • コンプライアンス関係:法令遵守や、社会規範、企業倫理などへの組織的対応

今回は、1つ目の役割である情報関係の中から、マネジャーが役割や目標を明示することの重要性についてまとめます。


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マネジャーに求められる情報伝達機能

まず、情報伝達機能を大きく分けると、以下2つがあります。

  • 経営の目標や方針を組織に浸透(上から下)
  • 現場の必要な情報を経営に伝達(下から上)

会社が大きくなり組織の階層が増えれば増えるほど、経営と現場社員との距離感が遠くなり、声が届きにくくなります。

経営は、全社の戦略や方針を掲げ発信しますが、経営が設定するのはどうしても抽象度の高い大方針になります。

それを自身の組織に当てはめ、咀嚼し、メンバーの役割や目標に落とし込むのがマネジャーの役割(上から下の情報伝達)です。


また、経営からは実際の現場が遠く、現場で起きていることを肌感覚として感じるのは難しいです。

そのため、マネジャーには、顧客やマーケットの状況、組織の状況など、経営の意思決定に関わるような現場の情報をきちんとフィードバックしていく役割(下から上の情報伝達)があります。


どちらも経営と現場を結びつけるマネジャーの重要な役割ですが、下から上の情報伝達は、昨今のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進もあり、タイムリーな情報共有がシステム的に補完されるようになってきました。

一方、上から下の情報伝達は、抽象的な目標や方針を、組織に合わせてメンバーに響く言葉に翻訳して伝え、浸透させることを求められています。システムで置き換えが難しいこともあり、相対的に重要性が増しています。


マネジャーに求められる『対話力』とは?

役割や目標を明示することの重要性

経営戦略や事業戦略といった抽象度が高い方針をそのまま伝えたときに、自身の業務と結びつけて行動を変化させることができるメンバーは多くありません。

そのため、マネジャーが適切に噛み砕き、役割や目標という形でメンバーにわかりやすく伝えていく必要があります。

役割や目標は、組織のあらゆる活動の基となり、行動する際の判断軸になります。


例えば、メンバーの目標設定。

組織の役割や目標が曖昧な状態でメンバーに目標設定を依頼してしまうと、それぞれの価値観や考えに従って自由な目標設定がなされてしまいます。

面談を通して調整することもできますが、役割や目標を明示してから依頼する場合と比べて倍の時間を要します。

チェックして調整しない場合はさらに悲惨です。メンバーが設定した目標を達成したとしても、会社の方針や目標に達せず、評価されないというギャップが生じます。

目標設定は形骸化し、評価への納得感を低下させ、モチベーションを著しく下げてしまうでしょう。

▶ 目標設定のやり方|気をつけたいポイント


また、権限を委譲して仕事を任せるためにも、役割や目標の明示は必要です。

納得された役割や目標は、メンバーに責任感を持たせます。また、仕事を進める上での判断軸にもなります。

役割を果たすため、目標を達成するために何ができるか、自分なりに工夫し、自分で判断して進めるための土台になるのです。

逆に、役割や目標を明示せず、ただ業務をアサインしている場合、なぜ必要なのか、何の役に立っているのかをメンバーは理解できません。モチベーションを感じづらく、ただ与えられた仕事をこなす状態になりやすいです。

▶ withコロナの管理職に求められる権限委譲とは?|権限委譲のマネジメント


このように、メンバーに役割や目標を明示することは、マネジメントのあらゆる場面に影響を与えます。

組織をリードして高い成果を出すために、組織の役割や目標を明示することは欠かせません。


マネジャーが意識すべきコンプライアンスのポイント

自分の言葉で役割や目標を語る

「経営が〜〜と言っていた」「会社の方針は〜〜です」とそのまま伝えることに意味はありません。それは経営から、メールなり社員総会なりで伝えれば済む話です。

マネジャーに求められるのは、自組織に当てはめて、メンバーにわかりやすく伝え、行動変化につなげること。

そのために、以下のように自分に問いかけ、マネジャー自身が理解・納得することが必要です。


経営の目標や方針を自組織に当てはめると、どんな役割が期待されるのか。

自組織の役割を理解してもらうために、どんな伝え方をするとメンバーの心に響くか。

方針に沿って業績責任も果たすためには、どんな目標設定、ルール設定が必要か。


マネジャー自身が納得していない、リアリティのない言葉では人の心は動きません。

自身がしっかりと咀嚼して納得した上で、自分の言葉で役割や目標を語れるようにしましょう。

チームビルディングの方法|同僚との信頼関係がないチームでマネジャーはどうすべきか?

職場の人間関係があまり良くない、自分の仕事はするけど他のメンバーについて関心がないと感じていたり、従業員サーベイで同僚への信頼が低い、といった結果を見た経験はないでしょうか。

マネジャーにとって、メンバーの同僚という自分以外の対象が問題となっている場合、どうしたら良いか分からず悩まれる方が多い印象です。

ほとんどのケースでは、飲み会をする、休日にバーベキューをしてみるといった、業務外でのコミュニケーション増やそうとします。

しかし、ひとつの手段として有効ではあるものの、チームの発展段階によっては、量のコミュニケーションが意味をなさないケースもあります。

また、コロナ下では実施が難しかったり、仕事観の変化や、共働き、子育て、介護等多様な背景をもったメンバーが増えて、実施が難しいケースもあると思います。


今回は、タックマンモデルからチームビルディングについて考察し、日々の業務に盛り込むことで同僚への信頼を高める方法について解説します。


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チームビルディング手法|タックマンモデル(チームの発展段階)

チームビルディング(組織進化)の有名な理論として、心理学者のタックマンが提唱したタックマンモデル(チームの発展段階)があります。

チームの発足から、チームが成果をあげられる状態になるまでを5段階に分け、各段階をクリアしていくことで、チームが機能しはじめ、最高のパフォーマンスが発揮できるようになるというモデルです。

チームの人間関係が良くないケースは、強いチームの手前である、準備期間(形成期、混乱期)の状態です。

チームの発展段階では、どんなチームにも「混乱期」がやってきます。混乱期を乗り越えるためにどうすべきなのか、今回は形成期、混乱期を中心にタックマンモデルを例に考えていきましょう。

チームの準備期間|形成期と混乱期のチームビルディング

<形成期>

・構成メンバーが決まった段階で、チームメンバーはお互いのことをよく知らない状態

・チームの共通の目標や、チームメンバー個人の役割も明確に定まっていない状態


形成期にあるチームの特徴

  • マネジャーに説明や指示を求めようとする
  • メンバーに対して遠慮や不安、緊張感がある

最初は会話の「量」にこだわりましょう。チームのメンバー同士が気軽に話せる状況でないと、当然ながらチームは機能しません。

メンバーをシャッフルした定期的なランチ等でお互いが会話をする時間を持つだけでOKです。難しい取り組みは必要ありません。


形成期のチームビルディング

  • コミュニケーションの「量」が重要
  • お互いを知る機会が必要
  • リーダーはメンバーに対し、プロジェクト趣旨の説明、明確な指示が必要


<混乱期>

・チームとしての目的や個人の責任や役割が定着していない・理解しきれていないため、意見の食い違い、具体的な業務の進め方について対立が生まれる状態


混乱期にあるチームの特徴

  • 個人が、それぞれのやり方で動く
  • 自分の仕事はするがお互いに関して無関心
  • 個人が主張することで、対立・衝突が生まれる
  • メンバーのエネルギーはチーム内部の競争に向けられる
  • チーム全体のモチベーションが下がりがち
  • チーム内にゆるやかな派閥が発生する

チームの発展段階では、どんなチームにも「混乱期」がやってきます。チームとして前進していても痛みが伴う辛い時期です。このタイミングでは会話の「質」を意識する必要があります。質とは、お互いの考え方や価値観を知る時間ということです。


混乱期のチームビルディング

  • コミュニケーションの「質」が重要
    お互いの価値観や考え方のズレが対立を生み出すため、ランチや飲み会では解決されない。
  • お互いを理解するための対話が必要
    何をやりたいかといった価値観、得意不得意、何に喜びを感じるか等の人間性や仕事観を掘り下げる深い会話です。話し合うためのまとまった時間を設ける必要があります。ストレングスファインダーのような診断ツールを使うのもおすすめです。
    ▶ 価値観とは?|メンバーの価値観を理解する重要性
  • あえてメンバーの意見を表面化させる
    トップダウンでなく、メンバー全員で意見やその背景を明らかにし、皆が納得するためにどうしたらよいか話し合う。

強いチームへの飛躍の期間|統一期と機能期のチームビルディング

<統一期>

・チームの目指すべき目的や、各メンバーの役割や特徴が共有され、統一感が生まれはじめている状態


統一期にあるチームの状況

  • 目的やビジョン、役割等が明確になってくる
  • メンバーは、チームのために行動を修正する
  • 「私は」ではなく「私たち」が主語になる
  • チームが活性化し、モチベーションが高まる

マネジャーは明確な目的や目標を指し示し、メンバーに役割を与えることが必要となります。また、メンバー同士が協力できるような仕組みづくりや、各々の存在感を発揮するために、与えた役割に対する成果を承認、称賛する等、チームの一人ひとりを主役にする活動が求められます。


統一期のチームビルディング



<機能期>

・チームに結束力や連動性が生まれ、個人の主体性が高いながら対立することはなく相互にサポートができるようになる状態。チームとして最もパフォーマンスを発揮できる理想的な状態。


機能期にあるチームの状況

  • チームが一致団結して機能する。共通のゴールに向かえている。
  • 主体性高く、自ら意思決定し、率先して行動する
  • チーム全体のパフォーマンスとモチベーションが高い
  • チーム内でお互いに強い信頼関係がある

チームビルディングはフェーズに応じた対応が必要

他のメンバーについて関心がない、従業員サーベイで同僚への信頼が低い、といったマネジャーを悩ます起こりがちなチーム状態は、「混乱期」にあたります。

混乱期を乗り越えられず何年も同じ状況で停滞してしまうチームも数多くあります。

単純なコミュニケーションの頻度・量を増やしても効果が薄い反面、解決の方法を知らないため、自分で考えてコミュニケーション量を増やす施策を実施するマネジャーが非常に多いのが特徴です。

乗り越えられないマネジャーの多くは、課題を感じて量のコミュニケーションを繰り返すものの、チームに変化が起こらないという辛い時期を過ごしています。

少し抵抗があるかもしれませんが、混乱期のタイミングではお互いの本音を知る「質」のコミュニケーションが必要です。

どんなチームも直面する混乱期を乗り切るために、ぜひ参考にしてみてください。